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時効取得者側と所有権名義人側の双方に相続が発生している土地を時効取得した事例

事 例

既に購入したと考えていた土地の名義が、元々の地主Aのままになっているのでどうにかならないかというご相談です。

元々の地主Aも亡くなっており、また、占有を始めた相談者Yの父Xも既に亡くなっているという事例です。

示談交渉での解決

元々の地主Aの子(相続人)であるBに、土地の名義を移転してくれないかと交渉したところ、これに応じてくれるとのことでした。

実際に、土地の登記名義を現在、土地を使用しているY名義にするにはどうするか(どのような登記申請となるか)について、複数回、法務局(登記所)と相談を重ね、最終的に亡A名義から直接、Y名義へ所有権移転登記を完了しています。

弁護士コメント

本件のように、土地の使用問題で長い年月が経過しており、当初の当事者が既に亡くなっているという事例を多く目にします。
(コラム「相続が関連する土地の時効取得(親や祖父母が過去に取得した土地名義が変更されていない)」

当時の当事者が存在しない場合には、その当時にどのようなやり取りがあったのか不明になってしまっていることが多く解決までに時間がかかりますので、不動産の権利変動が生じた場合には、すぐに登記手続きを進めることをお勧めします。

本件については、土地の名義人Aの相続人Bが手続きに協力してくれるとのことでしたので、実際に、弁護士がBの下に出向いて、必要書類に調印してもらうことができました。

本件で悩ましかったのは、「どのような登記申請になるのか」という点でした。
判断に迷った点は、主に次のような問題でした。

① 土地登記名義人であった亡Aについて、登記簿上の住所から亡くなった際の住所が変わっていた(住所変更登記が必要か)
② Aは亡くなっているので、時効取得での所有権移転登記の前に、AからBへの相続登記が必要か
③ 自主占有から20年経過時点では、相談者Yの父Xが生存しており、土地を占有していた。その後Xは亡くなったが、Xの相続人としては、子Yの他にXの妻Z(Yの母)がいる。希望としては、Y名義にしたいが、どのような登記申請になるか。

Bは手続きに協力してくれると言ってくれてはいますが、何度も判子をもらうわけにもいかないため、しっかりと、どのような登記申請内容になるのか、法務局(登記所)と協議を重ねてから、登記申請書類を作成しました。

登記官と協議を重ねた結果(あくまで本事例についての一登記官の見解)、次のような結論に至りました。

① 亡Aの住所変更登記は不要
② 亡AからBへの相続登記も不要
③ 時効援用権をYが一人で相続したという内容のYとZの遺産分割協議書を添付して、亡AからYへ一挙に所有権移転登記が可能

以上の法務局の見解に基づいて、亡AからYへ時効取得による所有権移転登記を完了しています。

なお、時効取得による不動産の所有権移転を行うと、取得者に対して、その不動産の時価額が一時所得として、所得税の課税対象となるので注意が必要です。
(参照:国税庁HP「土地等の財産を時効の援用により取得したとき」)

(なお、本件は、あくまで実際の事例を改変してフィクションとしたものを「解決事例」としてご紹介するものです。)

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